基礎から分かる 改正相続法の実務ポイント解説
著者 | 大坪 和敏 著 |
---|---|
書籍カテゴリー | 資産税関係 |
刊行日 | 2018年10月31日 刊行 |
ISBN | 978-4-7547-2598-3 |
ページ数 / 判型 | 248ページ / A5判 |
定価 | 税込2,241円(本体2,037円+税10%) |
本書の内容
本書は、約70年ぶりとなる平成30年の相続法(民法)の大改正について、改正内容を分かりやすく解説し、改正を踏まえた相続法が定める相続のルール全般を、実務的な観点から制度と共に関連する手続についても解説。
第1編では、今回の改正点を取り上げてどのような改正がなされているか、改正概要や制度の趣旨等、そのポイントとなる要点を改正前の制度との比較も含めて分かりやすく解説。
第2編では、改正を踏まえて、相続法全体とそれに伴う手続について、基本的に押さえておくべき基礎的事項を解説。
第3編では、参考資料として、改正相続法の適用時期一覧表及び経過措置一覧表並びに改正前後が分かる相続法(民法)及び「法務局における遺言書の保管等に関する法律」の条文等を収載。
相続法が配慮している基本的なルールの基礎となるポイントを簡潔につかみ、相続トラブルを未然に防ぐための基本知識を習得できる1冊。
特色
少子高齢化、社会経済状況の大きな変化は、相続関係にも大きく影響を及ぼしており、対応する観点、特に配偶者保護の観点から、約70年ぶりとなる民法(相続法)の大改正の概要と相続法全体を分かりやすく解説。
1 配偶者保護のための方策として、高齢の配偶者にとっては、従前の居住権を保護することが重要であることを踏まえて、配偶者の居住権を保護するための新しい権利として新設された「配偶者居住権・配偶者短期居住権」を制度趣旨も含めて、実務的に解説。
2 遺言の利用を促進するための方策として、自筆証書遺言の方式を緩和する方策や遺言の円滑な実行を図るために遺言執行者の権限を明確にすること、遺留分権利者の権利行使によって生ずる権利を金銭債権とする改正などを実用面から解説。
3 相続人を含む利害関係人の実質的公平を図るための見直しとして、遺産分割前に遺産に属する預貯金等の財産を処分した場合の遺産の範囲の見直しや、相続人以外の親族が介護等の貢献を行った場合に、その貢献を遺産の分配で考慮する制度の新設について、事例を交えて解説。
主要目次
第1編 平成30年改正の概要
第1 配偶者保護のための制度
1 配偶者居住権の新設
⑴ 配偶者居住権の意義
⑵ 制度趣旨
⑶ 配偶者居住権の成立要件及びその内容
2 配偶者短期居住権の新設
⑴ 配偶者短期居住権の意義
⑵ 制度趣旨
⑶ 配偶者短期居住権の成立要件及びその内容
3 配偶者に対する持戻し免除の意思表示の推定
⑴ 持戻し免除の意思表示の推定
⑵ 改正の趣旨
⑶ 規定の内容
第2 遺産分割の見直し
1 家事事件手続法の保全処分の要件の緩和
⑴ 改正の概要
⑵ 改正の趣旨
2 仮払い制度の創設
⑴ 仮払い制度
⑵ 改正の趣旨
⑶ 仮払い制度の内容
3 遺産分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲
⑴ 改正の概要
⑵ 改正の趣旨
⑶ 要件事実
4 一部分割
⑴ 改正の内容
⑵ 改正の趣旨
第3 遺言制度の見直し
1 自筆証書遺言の方式緩和
⑴ 改正の内容
⑵ 改正の趣旨
2 自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度の創設
⑴ 遺言書の保管制度の創設
⑵ 制度創設の理由
⑶ 保管制度の概要
3 遺贈の担保責任等
⑴ 遺贈の担保責任
⑵ 改正の趣旨
⑶ 撤回された遺言の効力に関する民法1025条の改正
4 遺言執行者の権限の明確化
⑴ 改正の要点
⑵ 改正の趣旨
⑶ 主な改正の内容
第4 遺留分制度の見直し
1 遺留分減殺請求権の効力及び法的性質の見直し
⑴ 遺留分侵害額の請求
⑵ 改正の趣旨
⑶ 遺留分侵害額請求権の内容
2 遺留分の算定方法の見直し
⑴ 遺留分を算定するための財産の価額に関する定め
⑵ 遺産分割の対象となる財産がある場合に関する定め
3 遺留分侵害額の算定における債務の取扱いに関する見直し
⑴ 金銭請求権にかかる債務(遺留分侵害額)の消滅請求
⑵ 改正の趣旨
第5 相続の効力等に関する見直し
1 共同相続における権利の承継の対抗要件
⑴ 改正の概要
⑵ 改正の趣旨
2 相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使
⑴ 改正の概要
⑵ 改正の趣旨
3 遺言執行者がある場合における相続人の行為の効果等
⑴ 改正の概要
⑵ 改正の趣旨
第6 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
1 特別の寄与の制度
2 制度趣旨
3 特別の寄与制度の概要
第2編 相続法の概要
第1 相続人と相続分
1 遺産相続
⑴ 遺産相続の意味
⑵ 相続の開始
⑶ 失踪宣告の手続(家事148)
⑷ 同時死亡の推定
⑸ 人が亡くなったときの戸籍の届出
⑹ 祭祀の承継
2 誰が相続するのか
⑴ 法定相続人
⑵ 配偶者
⑶ 子とその代襲者
⑷ 直系尊属
⑸ 兄弟姉妹とその代襲者たる甥・姪
3 相続人としての資格喪失
⑴ 相続人としての資格が失われる場合
⑵ 相続欠格
⑶ 相続人の廃除
⑷ 相続の放棄
4 相続の承認
⑴ 相続開始後に相続人がとり得る手段
⑵ 手続ができる期間(熟慮期間)
⑶ 単純承認
⑷ 限定承認
5 相続する割合(法定相続分)
⑴ 遺産共有
⑵ 相続分
⑶ 法定相続分
⑷ 具体的相続分
6 相続分の指定
⑴ 法定原則の修正
⑵ 指定相続分
⑶ 相続分の指定がある場合の債権者の権利行使
第2 特別受益・寄与分
1 相続人が特別に財産をもらっていた場合(特別受益)
⑴ 特別受益の持戻し
⑵ 特別受益者
2 特別受益となるかが問題となるもの
⑴ 特別受益の対象
⑵ 婚姻・養子縁組のための贈与
⑶ 生計の資本としての贈与
3 特別受益の評価
⑴ みなし相続財産の算定
⑵ 贈与の価額の加算
⑶ 贈与の価額の算定基準時
⑷ 具体的相続分の確定
4 持戻し免除の意思表示
⑴ 持戻し免除の意思表示の趣旨
⑵ 持戻し免除の意思表示の方法
⑶ 配偶者についての持戻し免除の意思表示の推定【平成30年改正】
5 生前の相続人の貢献(寄与分)
⑴ 寄与分とは
⑵ 寄与分の要件①─相続人による寄与行為の存在
⑶ 寄与分の要件②─寄与行為が「特別の寄与」と評価できること
⑷ 寄与分の要件③─被相続人の財産の維持又は増加があること
⑸ 寄与分の要件④─寄与行為と財産の維持・増加との間の因果関係
⑹ 寄与分の類型
6 寄与分の決め方
⑴ 寄与分を求める手続
⑵ 寄与分の協議
⑶ 寄与分を定める審判
⑷ 寄与分の評価
第3 相続の開始
1 相続の効力
⑴ 相続財産の包括承継
⑵ 遺産共有
⑶ 共有される遺産の管理
⑷ 共同相続における権利の承継
2 遺産の管理
⑴ 共同相続人による遺産の管理
⑵ 家庭裁判所による遺産管理者の選任
⑶ 熟慮期間中の遺産管理に関する特則
⑷ 管理の費用
3 遺産分割前の預貯金債権の行使
⑴ 仮払い制度
⑵ 仮分割の仮処分の申立て
第4 遺産分割
1 遺言がない場合の遺産の処理(遺産分割)
⑴ 遺産分割の意義
⑵ 分割の方法(手続)
⑶ 一部分割
2 遺産分割の対象
⑴ 遺産分割の対象財産の確定
⑵ 遺産分割の対象となる財産
⑶ 遺産分割の対象とならないもの
⑷ 遺産分割の対象になるか問題のある財産
3 遺産分割の手続
⑴ 手続の種類
⑵ 協議による分割
⑶ 遺産分割の基準
⑷ 分割協議の無効・取消し
4 家庭裁判所における遺産分割手続
⑴ 調停による遺産分割
⑵ 審判による遺産分割
5 遺産の評価
⑴ 遺産評価の基準時
⑵ 遺産評価の方法
⑶ 不動産の評価
⑷ 株式の評価
⑸ その他の遺産の評価
6 遺産分割の方法
⑴ 分割方法の種類
⑵ 現物分割
⑶ 代償分割
⑷ 換価分割
⑸ 共有分割
⑹ 全面的価格賠償による分割
第5 相続人がいない場合
1 相続人がいない場合の遺産の処理
⑴ 相続人がいない場合の概要
⑵ 相続財産法人
⑶ 相続財産管理人の選任
⑷ 相続人の存在が後日明らかになった場合
⑸ 相続財産の清算
⑹ 最後の相続人捜索
⑺ 相続人不存在の確定
2 特別に縁のあった人への財産分与
⑴ 特別縁故者に対する相続財産の分与制度
⑵ 特別縁故者の意義
⑶ 相続財産分与の手続
⑷ 分与される財産
第6 遺言
1 遺言を作ることの意味
⑴ 遺言の意義
⑵ 遺言できる能力
⑶ 遺言の方式
⑷ 遺言で定められる事項
⑸ 共同遺言の禁止
⑹ 証人・立会人の欠格事由
2 公正証書遺言の作成方法
⑴ 公正証書遺言の特徴
⑵ 公正証書遺言作成の要件
⑶ 公正証書遺言の作成
3 自筆証書遺言の作成方法
⑴ 自筆証書遺言の意義
⑵ 自筆証書遺言作成の要件
⑶ 自筆証書遺言書の加除・訂正
⑷ 自筆証書遺言の保管
⑸ 遺言書の検認
4 その他の遺言書
⑴ 秘密証書遺言
⑵ 危急時遺言
⑶ 隔絶地遺言
5 遺言の効力
⑴ 遺言の効力発生時期
⑵ 遺言の無効・取消し
⑶ 遺言の撤回
6 遺贈
⑴ 遺贈の意義
⑵ 特定遺贈・包括遺贈
⑶ その他の遺贈
⑷ 遺贈の承認・放棄
⑸ 遺贈の無効・取消し
⑹ 遺贈の履行
7 遺言の執行
⑴ 遺言執行の意義
⑵ 遺言執行の費用
⑶ 遺言執行者
第7 配偶者の居住の権利
1 配偶者居住権
⑴ 配偶者居住権の成立要件
⑵ 審判による配偶者居住権の取得
⑶ 配偶者居住権の存続期間
⑷ 配偶者居住権の評価
2 配偶者居住権の効力
⑴ 登記請求権
⑵ 第三者対抗要件
⑶ 妨害の停止の請求等
⑷ 配偶者による使用及び収益
⑸ 第三者による適法な居住建物の使用又は収益
⑹ 居住建物の修繕等
⑺ 配偶者居住権の消滅事由
⑻ 終了時の義務
3 配偶者短期居住権
⑴ 配偶者短期居住権の内容及び成立要件
⑵ 居住建物取得者の権利義務
⑶ 配偶者の権利義務
⑷ 配偶者短期居住権の消滅事由
⑸ 終了時の配偶者の義務
第8 遺留分
1 遺留分制度の趣旨
⑴ 遺留分の意義
⑵ 遺留分侵害額請求権
⑶ 遺留分の放棄
2 遺留分権利者及びその割合
⑴ 遺留分権利者
⑵ 遺留分の割合
3 遺留分の算定
⑴ 遺留分を算定するための財産の価額の計算
⑵ 相続開始時点で有していた財産
⑶ 贈与した財産の価額
⑷ 遺産債務の控除
⑸ 基礎財産額の評価時期と評価方法
4 遺留分侵害額の請求
⑴ 遺留分侵害額請求権
⑵ 遺留分侵害額請求権の内容
5 遺留分侵害額と受遺者又は受贈者の負担額
⑴ 遺留分侵害額
⑵ 受遺者又は受贈者の負担額
第9 特別の寄与
1 特別の寄与の制度の趣旨
⑴ 特別の寄与の制度
⑵ 特別寄与料の請求権者(特別寄与者)
⑶ 特別寄与料の請求要件
2 特別寄与料の額
3 特別の寄与の請求手続
⑴ 特別寄与料の請求方法
⑵ 特別の寄与の請求期限
⑶ 家庭裁判所の審判の際の判断基準
第3編 参考資料(参考法文)
1 平成30年改正民法施行日一覧
2 平成30年改正民法経過措置一覧
3 民法(相続法関係)
4 法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成30年7月13日法律第73号)
索 引